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IT 業界の再委託について思うこと

# 概要

最近また某社のダイナミック中抜き案件が話題になってたので思ったことなどを書く。

あくまで個人的見解かつ特定の人物や団体を非難する意図のものではないと前置き。

# 再委託自体は問題ない

健全な再委託を行い、結果的に中抜きの構図になること自体は別に特段悪いことだとは私は思わない。

日本の解雇規制の仕組み上、企業はプロジェクト単位で人を雇用&解雇することが気軽にできないので、一時的に人手が必要になった場合は業務委託や派遣をするのは仕方なく、その際に企業間で委託が階層化することは珍しいことではない。

# 健全な再委託とは

細かく分類するといろいろなパターンあると思うが、とりあえず IT 業界で代表的な 2 つを記載。

# 例 1

ある事業会社がシステムを開発するプロジェクトで、事業会社から案件を受注した会社(1 次請け)が、再委託で下請けの会社に発注する場合のケースで、事業会社との要件定義や各種折版などもろもろの対応を一次請けが行い、かつ一次請けが主導してプロジェクトを推進し下請けの管理している状態。

よくある「事業会社」→「SIer or コンサル」→「システム会社」の構図。

一次請けは当然、あらゆる責任を負いプロジェクトを実施する為相応のリスクをもってやってるし、基本的に上流工程はそれなりの経験スキルが必要かつ荷が重い業務である為、その分下請けの企業より高い額を管理費用として上乗せしてクライアントに請求するのは自然なことかと。

# 例 2

案件を紹介しクライアントとの面倒な契約周りを代行してくれる代わりにその代行費用として中間マージンを取るというケース。

特に個人事業主や中小零細企業となると、大手企業や大規模プロジェクトなどを直接契約、受注できないし、案件が途切れた状態で人員コストを払うと即経営悪化になる為、そこを仲介してくれる分に報酬を払うのは普通なことだと思う。

中間マージン取られるの嫌なら自分で営業してプライム案件獲得したり、自社でサービス開発して収益あげればいいだけの話。

# 共通すること

いずれも共通しているのは誰も損をしていない win win の関係であることで、それが成立しなければ自由競争の下、取引をやめたり、自社に有利になるよう交渉などをするしかない。

# 民間企業間で中抜きするのは問題ない

前項に記載した健全な再委託の状態じゃなく、明らかに暴利な金額をピンハネしたり仕事を右から左に丸投げするような企業がいたとしても、民間企業同士であれば別に問題はない。

なぜなら、当然受発注時に双方条件の確認をし発注側と受注側の納得、同意のもとで契約をしているはずなので。

企業としては売り上げは最大に支出は最小にというあたりまえの行動をしているに過ぎない。むしろそういう仕事をとってこれる人は調整能力高く優秀だと思う。

ピンハネされたくなければ自社で直請けできるように頑張るしかないし、仕事を丸投げしてくるような会社とは付き合わなければいいだけ。

クライアント視点の話だと、一次請け企業から膨大な価格を吹っ掛けられるなら、コンペ企業探して相見積とればいいし、いいようにされない為に発注の側リテラシーを上げればいいだけ。

# よくないと思っていること

前項からの流れでだいたい察しがつく内容だが、地方自治体や国が行う仕事、すなわち予算が税金のプロジェクトで法外な金額をピンハネしたり再委託の階層が 5 次、6 次、7 次と深くなり余分な中間マージンが発生しているものは基本的によくないと思っている。

# その状態になりがちな理由

発注側の人、つまり主に公務員の方々は当然、発注する仕事の分野は素人となり、適正な価格や納期の判断はできないと思われるし、税金から支出される予算は実質無限かついくら使っても使う側には痛手はない。

その為、親密な企業が随意契約で入札を行なわず言い値で仕事を受けてしまっているのは、しかなないとは思いたくないけどそれが現状だったりする。

# なにがよくないと思うのか

別に税金が民間企業に流れてもそれで経済が回ればいいじゃない?的な話もあり、確かに一理あるかもとは思うが以下 2 つの理由により完全には同意できない。

  • 競争が行われない分、企業や労働者の生産性能力が上がらない(日本が経済成長しなくなった要因の一つだと勝手に思っている)
  • 税金が特定の人と企業に流れ、税金の役割の一つでもある富の再分配量が減少する(そして増税へ...)

TIP

私自身も会社員時代に官公庁系の案件を多少やったことがあるが、数日とかで終わるようなちょっとした簡単な作業で 1000 万を超える報酬が入ってくることがあったりした。当然発注元からはその倍以上は入ってるはず。

まだこれは序の口で、いわゆる運用保守をやってる人たちから聞いた話だと、ドキュメントの管理などもはや IT ほぼ関係ないような作業などを素人にやらせて、エンジニア単価(80 ~ 120 万くらい)で発注受けてるとのこと。

# じゃあどうあるべきなのか(願望)

素人的な意見丸出しだがどうなれば改善されるのか考える。

この手の話はだいたい反対勢力から、入札せずに随意契約するのはその企業しかできない仕事だからだってのを聞くけど、そもそも再委託している時点でその企業ができている仕事じゃないし、再委託している企業と再委託されている企業の両方に直接発注すればいいじゃん。。。っていつも思う。

まあその辺は正直どうでもいいことだと思っているし、やっぱり現行のルールや仕組み、発注側の体制、構造の問題だと思ってるので受注側の企業を悪く言うつもりも全くない。

# 検証する機関の設置する

緊急を要する案件で、とにかくスピードが大事でどんぶり勘定止む無しな時は、これまで通り実績ある企業に随意契約ですぐに体制整えて業務を開始するのはいいと思うが、それを検証する機関も別途立ち上げ、妥当な金額で行われているかをチェックしたり、支払いすぎた金額があった場合は返金できるようにする。

# 再委託を制限する

明らかに特定の企業にしかできない案件で随意契約を実施する場合は、再委託を禁止にして発注側が受注側の企業をすべて管理する体制を取るか、適正価格でのみ再委託を許可する。 それをするにはその分野の発注側の知識、能力が必要なので、民間企業から出向者を募ることになると思うが、その対象の会社や出向時の報酬などの情報をすべてオープンにした状態で行うようにする。

# 入札手続きを簡略化する

上記 2 点のケース以外は原則入札にして、かつ、入札に関連する各種面倒な手続きなどは簡略化させ、新規参入ができやすい形にする。 web 上で RFP を公開して、質問事項などはオープンなチャットで気軽に共有しながらできる環境だといいかと。

# まとめ

まあ今回もいつものように、氷山の一角が公になって国民がわーって騒いで叩いて、しばらくしてほとぼりが冷めて知らない間に収束してる、一種のガス抜き的なパターンで終わると予想している。