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退職代行について思うことや考察など

# 概要

新社会人が、入社後すぐ退職代行を使って退職してる今日この頃、退職代行や退職そのものについて思ってることやあれこれ考えたことを書く。

# 当初の考えから現在の考え

退職代行が流行りだした当初は、お世話になった会社に対し、自分で「辞めます」って言えず、金払って他人に丸投げするのか、、、という、サービスを使って辞める人に嫌悪感を感じていた。 ただ、いろんな人の事例や体験談を聞いたり見たりすると、その考えは変わった。

結局のところ、退職代行に限らず、あらゆるサービスで言えることだが、サービスを使う人のモラルの問題で、まっとうな理由で使う人もいれば、よくない理由で使う人もいる、ということ。

今では肯定派までとはいかないが、こういったサービスの需要があるということは、それは今の社会にとって必要とされていることなんだろうな、と思うようになった。

# 退職代行が普及してきた背景の考察

退職代行がなんで普及してきたかを AI に聞いたら、労働環境の変化やらメンタルヘルスの重要性の認識とかしっくりしない回答が返ってきた為、個人的な考察をする。

# 1. 労働に対する価値観の変化

まず、データとして確かなのは、退職代行を利用している年齢層は 20 代と 30 代が圧倒的に多い。

それら世代は、学生のころからネットに触れられる環境で育ち、ネット上でインフルエンサーやユーチューバーなどのキラキラした生活だったり、意識高い系の配信などを見て、苦労して汗水たらして耐えながら労働する、ということに対し抵抗感や蔑んだ価値観を持っている人が一定数いると思ってる。

WARNING

実際はよほどの天才でもない限り、インフルエンサーやユーチューバーの人たちは見えないところですごく努力をしている。(それを努力と感じずやってる人は真の天才)

芸能やスポーツと同じで、視聴者やファンからすると、活躍しているところや輝いているところしか基本的に見えないので、そういったことを知らないのは構造上しょうがないことでもある。

# 2. 会社と労働者との優位性の変化

少子化が進んで企業も人手不足で、昔と違って会社と労働者のパワーバランスが逆転し労働者優位になった為、現代では簡単に正社員に就職でき、転職もあらゆる手続きが効率化され簡単にできる。

つまり、正社員を辞める、という選択肢がそこまでキャリアや人生におけるリスクがあるものではなくなった。

TIP

就職氷河期~リーマンショック後数年くらいは企業側が優位の時代だった。

正社員の就職自体が大変で、賃金は上がらず、長時間労働での体力的負荷、あらゆるハラスメントで精神的負荷が発生しまくってた時代。 まだ終身雇用や年功序列の考えもそれなりに残ってたので、退職、転職自体が今に比べたらリスクとリターンが釣り合ってなかったと思う。 まあ私は転職しまくってたけど。

# その 2 つがかけ合わさると・・・

そういう価値観の人や取り巻く状況で、ちょっと厳しいこと言われたり、少しでも理不尽な仕打ち(実際は理不尽でもなんでもなく当たり前のことも多いが)を受けたりしたらどうなるか・・・? 結果は明白でそりゃ退職代行無くてもすぐ退職する。

つまり、退職、転職をする人の母数と 1 人あたりの回数、頻度が昔と比べて多くなり、そこに退職代行というある種プロの業者が参入することで、退職手続きがより効率化され、便利そうだからみんな使うようになった、ということだと思う。

# 退職代行のいいと思うところ

# 辞めさせてくれない会社から脱出できる

あれこれ理由をつけたり、最悪のところはある種脅しをかけられたりして、会社をなかなか辞められないということはある。 そんな時、第三者が介入すれば民事訴訟や世間の評判を恐れて会社側も言うことを聞かざるを得なくなる。

昔は弁護士がその役割だったと思うが、退職代行は手続きや金額的に弁護士に相談するよりも明らかにハードルが低い。

# 労働人口が減りにくくなる

会社や上司や顧客などがストレスとなり、思いつめて鬱になって働けなくなったり、最悪の場合命を自ら断つケースがある。 責任感が強い人や、自己犠牲をいとわない人、謙虚な人ほど、そういった傾向にあり、なかなか自分から退職を言い出せない。

そういった人にとって退職代行は、自分から言い辛い、行動し辛いことを後押ししてくれる選択肢の一つになると思う。

# バックレよりはだいぶマシ

アルバイトじゃあるまいし。。。と思う人もいるかもだが、普通に正社員でも、急に来なくなった、気づいたらいない、ということはたま~にある。 当然本人に電話してもつながらない、居住もいつの間に変わってていない、ということで緊急連絡先(だいたい親族)の電話に連絡しても全然違う電話番号に繋がったりして、最終的に行政まで連絡して追っていく羽目になり、めちゃくちゃ手間がかかることになる。

当然引継ぎとかは一切ない状態でいなくなるので、現場ではそれらの急な対応で大変な思いをする。 退職代行が存在することで、退職手続きがめんどくさくて会社をバックレするような人が減りそうな気がする。

# 退職代行の悪いと思うところ

# 忍耐力の低下や機会損失のリスク

少し古い考えかもしれないが、苦労して耐えたその先にしか到達できない領域や、得られないスキルや経験というものは確実にある。(世の中で一代で成功してる人は大体そうだと思う)

明らかな理不尽なら話は全く別だが、ちょっとした嫌なことでも逃げ癖が付くと、本来はなんてこともないことにも耐性がつかなくなり、社会人としてキャリアを形成し人生を豊かに過ごしていくことが難しくなっていくと思う。

嫌な仕事、嫌な思いを一切せず、自分の思うとおりに好きなことだけやっていく、というのは余程の突出したスキルがある人ではない限りまず不可能ということを社会人であれば前提として理解が必要。

# やりすぎると職歴が低下する

当たり前だが、職歴というのは学歴と同じで、一生残っていくもの。正社員の退職(転職)がアルバイトみたいにフランクになることで、気軽に退職、再就職を繰り返すことができてしまう。

業界にもよると思うが、職歴が短期間で転職繰り返している人は、「うちの会社に入ってもまたすぐ転職するんじゃないか?」という評価が下され、マイナス評価となる。自分にとってどうでもいい会社からそういう評価が下されるのは別にいいと思うが、いざ自分の天職が見つかり、絶対この会社に入りたい、っていうときにそれが足を引っ張ることがある。

学歴も重要だが、それと同じくらい職歴も重要ということは、社会人経験少ない若い人達はあまりピンときてないので、知っておいてほしい。

# 労働者優位な状況が助長され、そして破滅へ・・・?

退職代行を恐れ労働者に配慮するあまり、高い待遇や処遇の条件がゆるゆるになることで、人材の成長意欲やスキルが高まらず、競争力が落ち、企業~業界~日本のあらゆる生産性、品質が低下するのではないかと悪い想像をしてしまう。

それは杞憂であってほしいことだが、やはり企業と労働者のパワーバランスはイーブンなくらいがベストだと思う。

TIP

体感ベースだが、私のいる IT 業界でも、昔と比べて、技術の使い方は簡単になり、情報も容易に手に入るようになったのに、各経験年数ごとでできることは確実に減っている。 (例えば昔だったら経験 1 年でリーダー、2 年で PM とかざらにあったが今はそんな人なかなかいない)

なんでこの経験年数でこれだけしかできないの?このスキルの人がなんでこんなに金額が高いの?とかいったこともここ数年でどんどん増えてきた。

逆に私の少し上の世代である氷河期世代を生き抜いてきたエンジニアは、高い技術力や汎用性、応用力、インプット&アウトプットの質の高さがある人が多い。(私が若い時に教わってた先輩や上司を基準にしているので思い出補正はかかっている)

そもそもその世代のエンジニア母数自体少なく、いろんな IT 系企業で管理職不足が起きてるみたいだけど。。。

# 退職する前に一つ踏みとどまって考えてほしいこと

いくら昔に比べて退職のリスクが格段に下がったとはいえ、リスクやデメリットが全く無いわけではないので、衝動的に退職を決断実行する前に少し冷静になってほしいと思う。

逆に踏みとどまらずさっさと退職したほうがいいと思う人

  • 「自分は能力高くこんな会社に貢献してるのに何で給料や待遇が悪いのかー」
  • 「会社や上司のこういうところダメだなー、自分だったらこうやってこううまくやれるのになー」

というような会社の愚痴や文句ばっかいう人は、そんなにスキルがあるなら、転職したら確実に給料も待遇もだいぶあがるよ?ていうか起業したら億万長者になれるよ!

世の中には人材の市場価値というものがあって、会社が人の給料や待遇を決めるのは基本的にその市場価値をもとに決めている。 もちろんそれが見合わないこともあり、過大評価されているならまあラッキーとして、過小評価されているなら皮肉でも煽りでもなく、ロジカルに考えるといつまでもその会社にいないで転職 or 企業しか選択肢はない。

# 部署や現場の配置換えで解消できないか

ある程度の規模の企業限定の話ではあるが、社内での働く環境を変えることで、人間関係や業務の内容が変わるので、そういった悩みから退職を考えているのであればまず第一優先で考えてほしい。

大企業であればグループ会社や提携会社への出向など、今の会社に在籍しつつほぼ転職に近いようなこともできるので、そういう環境にいるならそれも検討してみるのも更に良し。

# 同僚や先輩など身近な人に相談

意外と今抱えている悩み、不安、不満などは、人からすると大したことないものだったりすることはある。 社内の身近な人に相談することで、同じ思いはしてたけどそれはそんな大層なものじゃないよ、という話を実体験をもとに聞けたりする。

また、社内の人間が同じ思いを抱えている場合は、それらが団結し、オープンになっていくことで課題解決への足がかりになることだってある。

# 休職することの検討

体力的、精神的に弱ると、人は正常な判断ができなくなる。

正社員は労働保険に必ず入っており、休職が認められれば最低でも給与の 60%以上支給されながら休暇を取ることができる。そこでリフレッシュ&回復して、しっかりと余裕をもって最終的に退職するかを決めるでも遅くないと思う。

# 客観的、俯瞰的に考える

今自分の境遇が、同じ業界で別の会社はどうなのかを見て、相対的に良いほうか悪いほうか?というのを計ってみる。 実は今いる自分の会社がその業界では相対的に待遇がいい、というケースがあり、そういう時に同業界の別会社に転職すると確実に後悔する。

今はネットや AI で様々な情報が個人で簡単に調査できる時代なので、自分の業界や会社をより理解し今後のキャリア形成に活かすという意味でも、すぐに退職する気はなくても常にやっておいて損はないと思う。

もちろん、ネットは嘘の情報があったり、AI の生成する回答も完璧ではない為、情報を全部鵜呑みにするのではなく、詳しい人や身近な人に相談するのは忘れずに。

# 退職する人に向けて贈る言葉

# 社会人としての礼儀やマナーは忘れずに

明らかに暗黒漆黒なブラック企業で、超絶理不尽不条理スーパーコンボを決められたわけではない限り、会社への恩や敬意は感じて退職してほしいと思ってる。

  • 正社員を雇用するということは、企業にとって手間も時間もお金も凄まじくかかる
  • 即戦力ではない限り、一緒に仕事をする部署やチームの人達は受け入れのコストや教育コストがかかっている
  • 人が辞めた後その人がやっていた仕事が無くなり売り上げが下がるか、誰かが代わりに負担するかのどちらかになる

などのように、基本的には人が退職すると会社にとってはデメリットが生じる為、退職する時は関係者に感謝と、迷惑をかけることに対しての気遣いを伝えたほうが、残された側にとって少しでもモチベーション低下が減る。

# 退職代行で退職後に転職する時のこと

退職代行を使い退職をしてから、次の転職先を探す場合で、「退職代行を使って退職したこと」は予め次の会社に伝えたほうがいいと思う。

リファレンスチェックやバックグラウンドチェックというものがあって、実施している企業はそれほど多くはないだろうが、退職代行を使って退職したことが発覚することがあり、事前に言っておいた場合と黙っていた(隠していた)場合とでは印象はだいぶ変わる為。

別にまっとうな理由であれば、退職代行を使って辞めたことで難色を示す企業は少ないと思うし、それで嫌な顔をする企業はそもそも価値観が合わないか、ブラック企業の可能性高いので、すぐまた辞める可能性が高い会社への入社を回避できる。

# まとめや所感など

退職、転職が効率化され、ハードルも低くなることで、雇用の流動化は今後も加速しそうな気がする。転職エージェントの CM や広告めっちゃ増えた気もしていて、儲かってんだろうなぁ。。。と勝手に想像。