TechBlog

SESの経歴詐称について思うこと

# 概要

最近また SES の経歴詐称の話が話題になってるので、この手の話はいつもでてくるなーと思いつつ、なんでそういったことが起きるのかを自分の経験や周りの人の話を基に考えた。

# 基本おさらい

# なぜ SES という業態が必要なのか?

日本は解雇規制があり、簡単に正社員の解雇ができない為。

例えば、プロジェクトを遂行する為に人手が必要ということで、エンジニアの正社員採用をしたとして、プロジェクトが終了してやることなくなったのでさよなら、ということができない。 これが派遣や業務委託という契約であれば、プロジェクト終了で契約終了、ということがでる。

# なぜ SES 企業が経歴詐称をするのか?

大きく分けて二つ。

  • 派遣するエンジニアの経験やスキルが高ければ高いほど単価が上がり、その分派遣元会社の利益が上がる為
  • 派遣対象のエンジニアが自社の正社員の場合、案件が決まらないとその人の固定費がまかなえず、その分派遣元会社が赤字になる為

# なぜ発注側は経歴詐称を見抜けないのか?

ここから本題。

# SES の人材を契約するまでの主な流れ

基本的に SES の人材を契約する時、就職面接ほどではないが、それに近い形でしっかりと対象の人材の書類審査と面談を行う。

面談を行う際は、就職活動でいう履歴書や職務経歴書に近い形のもの(この業界ではスキルシートと呼ぶことが多い)を事前にもらい、面談時はそれをベースに、これまでどういったプロジェクトでどういう役割をしてきたかなどの質疑応答をする。

そこでスキルや条件面問題なければ、契約という形となる。

ではなぜ、この時に経歴詐称を見抜けないのか、ということを書く前に、どうすれば経歴詐称を見抜けるかを先に書く。

# 経歴詐称の見抜き方

採用面接でも SES の面談でも、応募者のスキルを見るときは主に以下 2 つの観点から見る。

  1. 参画してもらうプロジェクトで必要なスキルがどれくらいあるか?
  2. 経歴書に書いている業務スキルや技術スキルはどのレベルまであるか?

1 は、参画するプロジェクトの業務ができるスキルが無ければ人材ミスマッチとなる為、プロジェクトで使う技術についてどこまで理解できているかを聞く。

2 は、1 で必要なスキルが仮になかったとしても、応用が利くスキルがあるかや、知識の深さや広さがあれば 1 の知識もすぐに身に着けられる、という期待値が持てるかの観点で聞く。

これをしっかりやれば経歴詐称でだまされて発注は起きない。

# ではなぜ発注者はそれができないことがあるのか?

だいたいこんな感じだと思ってる。

  • 仕事を下請けに基本任せている(場合によっては丸投げしてる) ケースで、発注者側の技術の知見が浅い、そもそも無い
  • 人手がとにかく必要で、上司からいついつまでに何人確保しろ、みたいなノルマともいえるものが出てきてチェックが甘くなる(特に期日終盤)
  • システム開発の PJ は多種多様で、簡単で楽な PJ もあれば難しくきつい PJ もある。楽な PJ の場合、エンジニア一人一人のスキルや稼働はそこまで高くなくても問題なく PJ が回る為、そういった PJ を経験している人がそのノリでゆるくやってしまう
  • 派遣元企業の営業の軽快なトークに引き込まれ(騙され)、この人が、この会社が言うなら大丈夫だろうと信じて(洗脳されて)しまう
  • プレイングマネージャーや管理職などで、多忙で人材調達まで頭が回らず正常な判断ができない、そもそもそんな時間が取れない

# 経歴詐称は発注者側にとってデメリットしかないのか?

そんなの当たり前だろ、と思われがちだが、そうでもないことがあるのが日本の IT 業界の闇が深いところ。

# 経歴詐称が発注者側にデメリットにならないケース

なぜそんなことがあるかというと、答えは、みんな大好き多重請負の構造があるから。

補足

別に多重請負が完全な悪だとは思ってない。これも解雇規制上仕方ない部分もある。

IT 業界の再委託について思うことに関連を記載。

システム開発の場合、工数は人月で計算することが多いが、大規模な案件になると、何百人と人員が稼働する為、発注側も人月工数の妥当性や、一人一人のスキルと単価が見合ってるかなど細かく精査できず、ある程度どんぶり勘定にならざるを得ないことがある。

それを良しとして、未経験だろうが何だろうが、均一のエンジニア単価として発注して、人月工数の頭数にしちゃえってなる。なぜなら元請の顧客、つまり非 IT 企業や官公庁は人月工数や単価の妥当性とかわからないのだから。

多重請負の階層が深く、関わる会社が多くなるほど顧客から実態を把握するのが困難になり、そういうことがしやすくなる。

# 私が垣間見た闇の事例

  • 同じ名前の人がいろんな PJ や会社に 1 人月単価で入っている。多い人だと 5 ~ 6 とか。つまり一日 40 時間以上働いている計算。影分身や精神と時の部屋必須
  • 5 次 6 次受けで、人月工数上いるはずの人の実態が存在すらしていなかったり、どこの国の人かわからない謎の人たちがアルバイトで大量に来てたり。カオス極まる
  • 未経験者を IT 人材として大量に官公庁案件に送り込んで、そもそも IT の仕事すらやっていない現場。公金チューチューしてぼろもうけだぜ!ウェーイ

とまあいろいろ闇があるが、別にそういうことをやってる会社を悪く言うつもりはなく、それで経済回してるなら、、、まあ、、、いいんじゃない?(適当) ただし税金泥棒、テメーはダメだ

# その他思うこと

# 経歴詐称の責任所在について

派遣されたエンジニアの経歴詐称をしていたことが発覚したとして、その本人を責めることはやめてほしいと思う。

  • 就職での経歴詐称のように本人が経歴を詐称しているわけではない(詐称しても本人にメリットほとんどない)
  • 経歴が詐称されてることすら本人は気づいてない(会社や上司にこう言え、こう書けと教えられて的な)

ということがだいたいなので。責めるならその人の上司や会社。どちらかというとその人は被害者。

# 経歴詐称をするような会社に現在所属しているなら

あまり長く関わらないほうがいいと思う。

  • 様々なトラブルに巻き込まれる率高い
  • スキルが上がりにくい現場だったり、希望する業務ができない環境であることが多い
  • 自分が経歴詐称されていなくとも、他の経歴詐称している人の分のしわ寄せがくる

などなど、普通の会社にいるよりメリットはなくデメリットしかないので。

# 所感

SES の経歴詐称はたぶん今後もずっと無くならないと思う。発注者も派遣されるエンジニアも大変だなぁ。。。